2月15日8時15分配信 フジサンケイ ビジネスアイ

 金やプラチナ、原油など「コモディティ」と呼ばれる実物資産に対する関心が高まっている。一昨年の「リーマン・ショック」に端を発した金融危機が株式や債券、通貨など「紙に印刷された価値」への信頼を薄れさせ、投資マネーの「紙からモノ」へのシフトを誘っているからだ。さらに、中国など新興国をはじめとする世界的な資源需要の高まりも後押しし、投資熱を盛り上げている。(渡部一実)

 ◆背景にドル安

 「昔、金の地金(延べ板)を売買していた顧客は主に年配の人だったが、最近は若い人の姿も目立つ。将来の年金、給与に不安を持っているのだろうか…」

 田中貴金属ジュエリーの水木直人マーケティング本部長はこう話す。金地金の個人向け売買を手掛ける東京都中央区銀座の貴金属店「GINZA TANAKA」には、「(金価格が上昇してくると)フロアに入りきらないほどのお客さんが訪れる」(水木本部長)。

 金が資産運用の選択肢として認知度を上げた背景には、米ドルへの信認の低下がある。

 失業率の急上昇など米国の景気後退懸念が再燃し、世界的にドル安局面が続いた昨年11~12月。ヘッジファンドなどの大口の資金がドル建て資産の目減りを嫌気し、金に流れ込んだ。

 ニューヨーク・マーカンタイル取引所の金先物相場は連日のように史上最高値を更新し、国内でも09年の年間平均価格(大手地金商の店頭小売価格)は1グラム2951円と、1983年以来26年ぶりの高水準となった。

 ドル安を背景に、新興国が外貨準備でドルや米国債中心の運用を見直し、「金買い」を加速させていることも、底値を支えている。

 IMF(国際通貨基金)の統計では、昨年1年間で中国が454トン、ロシアが111トン、インドが200トンを購入。09年12月末時点でそれぞれ世界5位(08年末8位)、9位(10位)、10位(13位)の金保有国に浮上した。

 これら3国の外貨準備に占める金の割合はまだ10%以下で、欧米の6~7割に比べて低いため、「今後さらなる金準備の積み上げが予想され、金価格は中長期的に上昇の余地が大きい」(大和総研の山田雪乃シニアストラテジスト)と予測する。

 こうした世界的なマネーの流動化の波が、日本の家計資産運用にもじわりと影響を及ぼしているわけだ。

 ◆モータリゼーション

 投資家が注目している実物資産は金だけではない。

 自動車の触媒に使われるプラチナ(白金)やパラジウムは、昨年来、安定的に高値圏で推移している。世界1の自動車市場となった中国を筆頭に新興国のモータリゼーションの加速に伴い、今年も価格は高止まりする可能性が市場ではささやかれている。

 ◆米中金融規制 上値重い展開

 原油価格も上昇に転じる余地がある。

 昨年末に米国を襲った寒波の影響で、1月6日にニューヨーク・マーカンタイル取引所で1バレル=83.18ドルと2008年10月以来の高値を付けた原油先物価格(WTI)は、足元で70ドル台前半の調整局面に入っている。

 しかし、日興コーディアル証券の上西晃シニアマーケットエコノミストは「夏場にかけて底値を切り上げ、7~9月には75~85ドル、10~12月には90ドルを試す展開もありうる」と話す。

 本格的に世界経済の回復が見通せる局面に入れば、オイル市場にマネーが戻ってくるとみているからだ。

 コモディティ(実物資産)市場は今後どうなるのか。

 不安材料視されるのが、世界経済を牽引(けんいん)する米中両国での金融引き締めに向けた動きだ。特に、オバマ米大統領が提唱する金融規制案が可決され、ヘッジファンド業務や銀行の自己勘定取引が制限されれば、市場に流入する投資マネーが抑制されかねない。

 大和総研の山田雪乃シニアストラテジストは「両国の金融規制をめぐる不透明感を悪材料とし、コモディティ市場は春先にかけて上値の重い展開になるだろう」と話す。

 とはいえ、中長期的にみれば、世界経済は金融危機の悪影響から脱却し、着実に回復軌道をたどっている。金融規制の影響で春先に市場のエネルギーが細ったとしても、「年央から年後半というスパンでみれば、世界的な景気回復を織り込んで、市場は上昇トレンドで推移しそうだ」(山田氏)という。

 また、金融危機後の金融緩和策として、各国が大量の通貨を供給したことで、インフレへの傾斜を見込む投資家は少なくない。上西氏は「(インフレになる前に手元の通貨をモノに変える)『インフレヘッジ』のため、金などへの現物資産への投資が増えそうだ」と指摘する。

                   ◇

 ■先物ETF誕生 相場押し上げも

 国内の主要なコモディティ市場である東京工業品取引所でも、取引が活発化している。

 同取引所に上場する金やプラチナ、パラジウム、原油、ゴムなど全8銘柄の価格騰落率を示す日経・東工取商品指数(02年5月31日=100)は、09年12月末に258.83となり、08年末比で47.5%上昇した。

 金融危機の影響による大幅な下落となった08年から一転して商品価格の上昇が目立ち、「市場流動性の回復傾向が鮮明になっている」(同取引所)。

 1日当たりの商品先物の平均取引高も増加傾向にあり、今年1月は前月比0.2%増の14万3863枚と、6カ月連続で前月を上回った。

 コモディティへの投資熱が高まる中、国内の商品先物取引に投資する国内のETF(上場投資信託)と投資信託が初めて誕生する。同取引所の金先物取引、プラチナ先物取引に連動する2本のETFが15日、大阪証券取引所に上場。17日には、金先物取引に直接投資する投資信託「ジャパン・ゴールドファンド」が設定される。

 こうした動きについて、日興コーディアル証券の上西晃シニアマーケットエコノミストは「インフレヘッジの手段として年金基金などの機関投資家が購入すれば、短期的な相場の押し上げ要因になる」と指摘する。特に、低額から購入できるETFの誕生は、一般投資家の目をコモディティ市場に向けさせる機会となりそうだ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100214-00000010-fsi-bus_all
スポンサーサイト

 ←応援クリックお願いします!


今すぐチェック!
↓↓↓
2010.02.15 Mon l 年金 l top ▲