毎日新聞 10月20日(水)15時1分配信

 低所得世帯が半数を占める国民健康保険のセーフティーネットに深刻な地域差が生じている。06~08年度に医療費の窓口負担を1万件以上減免している市がある一方で、11県では全市町村が実施していない。減免基準を巡って行政と係争する男性は「制度がきちんと使えるかは自分だけの問題ではない」と主張する。【野倉恵】

 「家族のため、一つでもたくさん茶筒を作ろうとしてきた」。秋田県仙北市の伝統工芸「桜皮(かば)細工」職人、千葉秀喜さん(49)は話す。妻と高校生の子供2人、母親の5人暮らし。一緒に働いていた母親が06年に胃がんで入院し収入は3割減り、治療費など約16万円を支払えなくなった。市に減免を申請したが「前年より2分の1以上の減収」という市の減免基準に該当しないとして認められなかった。

 祖父の代からの職人だが、原料の山桜の減少に加え、急死した父親の負債3500万円が追い打ちをかけた。茶筒作りは熟練職人でも一つ3時間かかるが、工賃は1100円程度。1日十数時間作業し、母親の年金と妻のパート代を合わせても月二十数万円にとどまる。元々生活保護基準の8割程度に過ぎなかった収入は、6割近くに落ちこんだ。

 千葉さんは仙北市を相手取り、処分取り消しを求めて秋田地裁に提訴。地裁は4月の判決で、市の処分は収入の減少幅だけ形式的にとらえたと指摘。生活保護基準を目安に家族構成など個別具体的事情を総合的に考慮すべきだとして、異例の処分取り消しを命じた。

 市側は控訴し、2審判決を12月に控える。千葉さんは「働けるうちは生活保護を受けるべきでないと思ってひたすら働いてきた。減免されず追い詰められる人もおり、自分だけの問題ではない」と話している。仙北市は「国の新たな基準が出る前の市の(減免実施の)取扱要領は間違っていなかったので控訴は取り下げない。今後、要件を国の基準に合わせて見直すかどうかは検討する」としている。

 ◇解説…国保の5割赤字が背景

 医療費の窓口負担減免が定着しない背景には、市町村が運営する国民健康保険の5割が赤字(08年度)という事情がある。国は減免への財政支援実施を通知したが、貧困を想定せず、原則として一時的な困窮が対象との見解は変わらない。恒常的な低所得者は本来、医療費を全額公費で負担する生活保護の対象との考え方からだ。

 減免実施件数の多い東大阪市は、世帯主が年金受給者で世帯収入が生活保護基準額以下などなら対象。大阪府八尾市は月収が生活保護基準額の110%以下などなら認める。東大阪市は「窓口払いは緊急度が高い。調査の厳格な生活保護への切り替えはその先の話」と、国の通知後も従来方針を続ける方向だ。無年金者が推計118万人、生活保護基準未満の収入や資産で暮らす世帯は229万世帯との推計もある。保護を受けない生活困窮者の実態を把握し、支援の受け皿を整える必要がある。【野倉恵】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101020-00000038-mai-soci
スポンサーサイト

 ←応援クリックお願いします!


今すぐチェック!
↓↓↓
2010.10.23 Sat l 年金 l top ▲