Voice 11月14日(月)12時0分配信

◇孫のカードで贅沢三昧

 政府内を中心に、復興費用を捻出するための増税議論が盛り上がっている。いまのところ、所得税とタバコ税をミックスするかたちでの増税が有力だ。また、安住財務相は先のG20において、消費税5%引き上げを国際的な公約とし、来年度中の法案提出を約束した。こちらは社会保障関連の支出に充てるものと思われる。

 これ以上、赤字国債というかたちで将来にツケを先送りされるのは30代としては勘弁願いたいので、増税自体に異論はない。ただ、税と社会保障のグランドデザインがまったく議論されていないのが気がかりだ。

 そもそも、いくら増税せねばならないのか。2010年に、筆者もメンバーとして参加している若者マニフェスト策定委員会において、有識者も交えたうえで試算した数値があるので、紹介しよう。

 内訳はこうだ。まず、2010年度予算の財政赤字44兆円、新幹線や東名高速のように将来にわたって役立つモノに使われているわけではなく、垂れ流されている赤字がほとんどなので、ツケはわれわれみんなが払うべきだ。というわけで、1%で2.5兆円として消費税、約18%。

 次に、これから確実に増える社会保障分についても、いまから手を打っておかなくてはならない。(年金や医療といった)社会保険料だけでは賄いきれない公費負担は、現在約40兆円。これは高齢化のピークに近い2055年度には、およそ70兆円にまで増加すると予想される。増加分をとりあえず消費税で賄うとすれば、当面6%、最大12%ということになるから、いますぐに引き上げれば9%で収まる。財政赤字分と合わせて27%の引き上げが必要というわけだ。

 消費税27%ではない、5%にもう27%、トータルでは消費税32%分の暮らしを、この国はしているのだ。じゃあ27%分の差額はどうしているのかといえば、それが1000兆円にのぼる国の長期債務残高の山である。まさに「孫のカードで贅沢三昧」というのが、日本の過去20年ほどの現状である。

 ちなみに、60歳以上の世代と20歳未満を比較すると、受益と負担の格差は、じつに1億円にのぼることが明らかとなっている。最近では、鳩山政権がこの金額を拡大させてしまった。皮肉なことに、子ども手当を赤字で強行した結果、子供たちの背負う借金が拡大したわけだ。

 フォローしておくが、筆者はすべてを消費税で増税しろといっているわけではない。一部は相続税や所得税で代替できるだろう。ただ、経済活動に歪みを生まず、引退世代も一部を負担する消費税こそ、もっとも望ましい。消費税は低所得者も負担することから、逆進性を伴う向きを懸念する声もあるが、おおむね消費は生涯賃金に比例するため、万人に公平な税だ。こういった消費税の優れた点については、とくに再分配重視派が称賛する北欧諸国が、25%前後の消費税を設定している点からも明らかだ。

 ただ、筆者自身は(相続税や所得税で一部を代替するにせよ)現在の日本経済は、消費税で20%以上の増税インパクトにはとうてい耐えられないと考える。消費税率20%超を維持する北欧諸国の出生率は、スウェーデン1.94、ノルウェー1.98、デンマーク1.84と、1.37の日本とは大きな隔たりがある(2009年、世界銀行調査)。移民受け入れと併せて、年齢別の人口構成における正規ピラミッドを維持できている北欧諸国と、超高齢化社会に到達してしまった日本では、とても同じだけの荷物は背負えない。

 よって、先述のような増税を柱としつつも、社会保障の一定額の削減はやむをえないだろう。そのためのアプローチとして、筆者は短期と長期の視点から提案したい。

◇賦課方式はすでに維持不可能

 まず、デフレを理由に発動がストップされているマクロ経済スライド制度を発動するよう法改正したうえで、年金支給額の即日引き下げを実施すべきだ。デフレ下に年金支給額が据え置かれているために、所得代替率(09年時点のモデル世帯における年金支給額/平均給与)は62.3%と、当初の予定である57.5%を大きく上回ってしまっている。

 本来、物価や賃金といった経済環境に応じて支給水準は見直されるべきであり、事実、インフレ時には連動して支給額が引き上げられるわけだから、下げるべきときは下げるべきだ。「デフレ時には引き下げない」というルールはシルバーデモクラシーの賜物であって、何の根拠もない。

 加えて年金課税も強化し、現役世代並みの所得のある高齢者には応分の負担を求めるべきだ。

 年金制度の2004年改革は、賃金上昇率2.1%、積立金の運用利回り3.2%という甘い試算に基づいて「100年安心」と喧伝されたが、なぜかリーマン・ショック後のドタバタの2009年、賃金上昇率2.5%、運用利回り4.1%と、さらに大甘に試算されてしまった。その後、これらの数値はずっと横ばい状態が続いているわけで、もうこれは最初に結果ありきの粉飾数字としかいいようがない。

 結論からいえば、すでに現役世代でリタイア世代を支えるという賦課方式が維持不可能なのだ。空想的数字が並ぶのは、その事実を厚労省が認めたくないからだろう。制度に大幅にメスを入れれば、おそらく社会保険料方式を廃止して税方式を導入することは避けられず、そうすれば年金保険料という利権が彼らの手から離れてしまいかねないためだ。

 仮に公的年金が事前積み立て式だったとした場合、現在の積立金残高と比較すると、年金制度には500兆円以上にも及ぶ暗黙の負債が存在するといわれている。これらはすべて、これからの世代が負担する数字だ。そして、その負担はおそらく不可能だろう。なお、今回は年金を中心に述べてきたが、同様の暗黙の債務は、医療や介護といった社会保障全般に広く存在し、トータルでは1150兆円にものぼる。

 これ以上、暗黙の債務が拡大するのを防ぎ、社会保障制度自体を持続可能なものとするためには、社会保障全体の抜本的な改革が必要だ。それには、世代内で再分配を進める事前積み立て方式が望ましい。

 そのための移行コストをどう処理するか、新制度における給付と負担のバランスをどう割り振るか。それら論点をすべて含めたうえで、税と社会保障の一体改革を速やかに実施すべきだろう。

 このような短期長期の視点を踏まえることなく、非正規雇用労働者への厚生年金の加入拡大(という名の保険料徴収)や、2036年以降の年金支給開始年齢引き上げといった小手先の改革は、短期の痛みは和らげるかもしれない。だが、世代間の格差は増し、制度の持続可能性への疑問符も残ったままだ。団塊に次いで頭数の多い団塊ジュニアが社会保障の受け手に回る30年後の痛みは、むしろ増すことになるだろう。

 かつてこの国は、できることとやりたいことの区別がつかずに、空想的数字を並べて見込みのない戦争に突入し、最後はすってんてんになったという歴史がある。もはや制度の破綻は明らかなのに、ご都合主義の数字を並べてお茶を濁す現在の社会は、どこか当時と似ている気がしてならない。財政にも社会保障にも、残された時間は多くない。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20111114-00000001-voice-pol
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