産経新聞 11月25日(金)7時55分配信

 □働き方、業種で減額に差

 ■厚年→自営・共済は減額なし

 60歳を過ぎて年金を受けながら働くと、年金が削られる「在職老齢年金」。対象者から評判は悪く、年金制度改正でも検討課題の一つになっている。しかし、法改正を検討する厚生労働省の年金部会では、就労が阻害されるとの見方に疑問の声が上がり、緩和しても恩恵が特定世代に限られることから慎重論が強い。読者からは減額ルールの統一を求める声が上がっている。(佐藤好美)

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 千葉県白井市に住む坂上浩さん(64)=仮名=は昨年、45年間勤めた通信機器大手の会社を退職した。60~63歳は継続雇用で、その間の給料は月28万円ほどだった。

 坂上さんは60歳から厚生年金の一部が支給される世代。支給額は月12万円ほどだが、年金制度には賃金との合計が一定額を超えると、年金が減額される仕組みがある。結局、手元の年金は半分ほどになってしまった。

 継続雇用された年、職場でリストラがあり、2人でしていた仕事を1人ですることになった。残業が増えたが、残業代が増えると年金も減るため、手取りは思うように増えない。坂上さんは「なるべく仕事をしないようにしようと思わせる仕組みだと思う。それでも、お世話になった会社だし、お返しだと思って働いた」と話す。

 しかし、あるとき、中学時代の同級生と話す機会があった。同級生は中学卒業後に就職し、今も同じ会社で働いているという。「年金が減るだろう」と坂上さんが水を向けると、同級生がこう言った。「いや、会社から持ちかけられて書類上は退職し、請負(自営の形)で働いているんだ。給料も今まで通りだし、年金も丸々もらえるよ」

 驚いたのは坂上さんだ。「そういうことがあっていいのかと思いました。制度の矛盾じゃないでしょうか」。坂上さんは結局、年金が満額支給になる63歳で仕事を辞めた。「給料が増えると年金を減らすやり方は精神衛生上、悪い。年金財政の観点から、全体の年金額を減らすのは仕方がないと思うが、一生懸命働く人や現役時代にがんばった人の年金を狙って減らすのはおかしい」と言う。

 減額のルールが、働き方や職種で異なることには批判が多い。松戸市に住む遠藤安彦さん(77)は60歳で退職後、62歳から71歳まで会社勤めをした。年金減額は当時は60代前半のみで、遠藤さんも65歳まで年金が半減した。

 しかし、遠藤さんは減額に理解を示す。「年金が減っても、仕事をしている方が楽しい。若い人が年金を払ってくれるんだから、少しでもお返しした方がいい」

 ただ、許容できないのは、公務員や私立学校などに勤める人は減額のルールが異なることだ。「働いたら年金が減額されるのはやむを得ない。しかし、民も官も同じルールで負担する仕組みにしてほしい」と話している。

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 ■年金部会 減額緩和には消極的 恩恵は一部世代のみ

 現行制度では、減額の方法は制度や年齢で異なる。例えば、年金受給者が60~64歳で厚生年金適用の会社で働くと、賃金(月収+ボーナスの12分の1)と年金月額の合計が28万円を超えると、超えた分の半分の年金額が減る。さらに、合計が46万円を超えると、賃金の増加分だけ年金が停止になる。65歳以後は要件が緩和され、賃金(同)と厚生年金月額の合計が46万円超で半分が減額される。

 しかし、冒頭の坂上さんが指摘するように、厚生年金の受給者が自営業になったり、共済年金適用の仕事に転職した場合は、減額は実施されない。

 一方、国や地方の公務員や私立学校の職員だった人が60歳以降も同じ職場で働いた場合、「厚生年金→厚生年金」の人とほぼ同じ減額のルールが適用される。しかし、共済年金の職場にいた人が、厚生年金など制度の異なる職場に移ると、減額開始は46万円を超えた時点から。同じ他制度間への移動である「厚生年金→共済年金」に比べれば厳しいが、移動慣行を考えると、不公平感を抱く人は多い。

 年金改正を検討する厚生労働省の社会保障審議会・年金部会では10月、在職老齢年金が検討された。

 減額のルールについては、委員からも「年金減額は、(60歳以後も)厚生年金に引き続き加入する人が前提で、短時間労働者や共済対象者、賃金以外の収入がある者などは年金を満額受け取れる。賃金を基準に調整するのではなく、総収入ベースでとらえるべきではないか」と、職種でなく、収入に応じた減額を求める声が出た。

 厚労省はこの日、「年金減額が就労意欲をそぐ」との見方があることから、60代前半の減額方法を60代後半と同じにする案を示した。

 しかし、部会ではむしろ就労を阻害するとの見方に疑問が集中。「現場で見ると、在職老齢年金が就労意欲を抑制しているという実感はない」「賃金所得46万円以上の人が、年金停止を理由に就労をやめるインセンティブは働かないのではないか」など、否定的な見方が相次いだ。

 見直しへのもう一つの懸念は、制度変更の恩恵が51歳(平成24年4月1日現在)の人から60代前半の人に限られる点だ。厚生年金の支給開始は現在、65歳に向けて引き上げ途上。50歳(同、女性は45歳)以下の世代では、60代前半の年金自体がないためだ。委員からも「60代前半の年金減額の仕組みは、支給開始が65歳になれば自然になくなる制度。特定世代だけを対象にした見直しで、必要ないと感じる」などの意見が出ていた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111125-00000113-san-soci
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