東洋経済オンライン 11月30日(水)11時7分配信

 退職後の資産運用で浮上する問題の1つにリターン・シークエンス・リスクがあります。

 リターン・シークエンス・リスクとは、平均リターンが同じでも、リターンがどのような配列、どんな時期に発生するかで、その後の資産残高に大きな差がついてくる、ということです。

 たとえば、以下のような前提を考えてみましょう。

 今、退職後の資産運用のために、平均リターン3.5%が期待できるポートフォリオを組んだとします。もちろん、あくまで「平均リターン」ですから、毎年のリターンは平均3.5%の周りに散らばることになります。その散らばり具合がリスクなのですが、ここでリスクが8.5%とします。
 
 その意味するところは、ほぼ3分2の確率で、平均(3.5%)プラスマイナス8.5%(つまり▲5%~12%)の間にリターンが入るということです。さらに、95%の確率で、平均プラスマイナス8.5%の2倍のレンジ(つまり▲13.5%~20.5%)に収まります。

 ここに64歳で退職し、3000万円を保有している人がいるとします。この人は年金を補填するため、毎年120万円を運用資産から引き出すことを考えています。そして、この人が100歳まで生きると仮定しましょう。期待する平均リターンを3.5%、リスクを8.5%として、ここで以下の2つのケースを想定します。

■不運シナリオ

 初年度にリスク2単位分(17%)下振れ、2年目に1単位分(8.5%)下振れる。その後、平均よりは少し高いリターンを実現し、最終的には36年間の平均リターンが3.5%となる。
 
■幸運シナリオ

 初年度にリスク2単位分(17%)上振れ、2年目に1単位分(8.5%)上振れる。その後、平均よりは少し低いリターンが続き、最終的には36年間の平均リターンが3.5%となる。

 両方ともかなり極端なケースですが、違いをはっきりさせるためにこのような前提としました。簡単な試算をしてみると、驚くほどその違いが大きいのがわかります。

 80歳のときには、幸運シナリオでは最初の2年間で大きく稼いだのが効いて、約3000万円の資金が残っているのに対し、不運シナリオでは1500万円と退職時点であった資金が半分に減ってしまっています。
 
 さらに、90歳のときには、幸運シナリオでは残高が2000万円、不運シナリオでは500万円強です。そして、95歳のとき、不運シナリオでは資金が枯渇しますが、幸運シナリオではまだ1600万円弱の資金が残っています。そして、100歳になってもまだ1000万円が手元に残っている計算になります。

 この試算からも、同じ平均リターンでも、リターンがどのような配列、時期に発生するかで、後年の残高に大きな差がつくことがわかります。これがリターン・シークエンス・リスクと呼ばれるもので、これから退職者が増えるほど、このリスクへの対応が大きな課題になるものと思います。

 退職前の人で、まだ毎月の収入の一部を積立投資していく資産形成期には、それほど大きな問題にはならないのですが、退職後、定期的に資金を引き出していかなければならない資産活用期に入る人には、非常に大きな問題となってきます。

 現在、多くの方が退職者向けのモデルポートフォリオなどを示される際に、単純に平均リターンを使っての試算を示されるケースがしばしば見受けられます。しかし、これは不十分だと言わざるをえません。

 この問題を解決するために、モンテカルロ・シミュレーションと呼ばれる手法やストレステストなどがあります。
 
 しかし、たとえばモンテカルロ・シミュレーションによる精緻な計算をして、「あなたは60%の確率で大丈夫です」とコンピュータのご託宣があったとしても、あなたはそれで安心でしょうか?
 
 また、ストレステストで「最悪の事態が起これば、あなたの資産は2割減ります」と言われて、「ああ、その程度なら平気だ」と思えるでしょうか。それよりも多分、逆に、「本当にそれ以上、下がることはないのか」と心配になるのが普通でしょう。

 つまり、どれも完全な解決策とは言えないのです。結局、「資産運用に伴う不確実性が、残りの投資期間が短くなるほどよりシビアに効いてくる」ということなのです。だからこそ、加齢と共にリスクの高い資産の比率を下げていくということが必要というわけです。

 資産配分を調整するのに加えて、やはりいちばん大切なのは、毎年、資産運用計画と現実に起こったこととのブレを検証しながら、運用を続けるということだろうと思います。
 
 退職後の資金使途を、ニーズ(生活に必要なもの)、ウォンツ(余裕)、ウィシェズ(できたら欲しいもの)、ドリーム(夢)などに分類し、退職後資金の増減に合わせて、将来の支出のどの部分までが現在確保されているのか、を確認しながら、生活スタイルに修正を加えることも必要だと思います。

 たとえば、長く働く、生活費を切り詰める、持っている固定資産を活用するなど、しっかり対応をしていくことが不可欠ということです。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20111130-00000000-toyo-bus_all
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