産経新聞 6月9日(土)7時55分配信

 ■「もらい得」調査に限界

 ■「告発一度もない」「天引きできず」不公平感助長も

 生活保護の不正受給が止まらない。人気お笑いタレント、河本準一さんが母親の生活保護受給をめぐりおわび会見をしたことをきっかけに関心が高まっている。厚生労働省によると、不正な受給は過去5年で1・7倍に急増しているが、発覚しても警察への告発はごくわずか。行政による任意の調査には限界も指摘され、一部の不正な“もらい得”は不公平感を助長しかねない状況だ。

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 ◆警察に相談も

 「不正受給で告発したことは過去一度もない。月に1回は警察に相談しているが、いつも『これでは(立件に)持っていけない。筋が悪い』といわれてしまう」。ある政令市の担当者はこう打ち明ける。

 不正受給の内訳は、労働収入がありながら「ない」と偽って申告したケースが44%(平成22年度)と最も多く、年金受給の無申告が28%と続く。だが、詐欺や生活保護法違反などの容疑で立件されるケースは極めてまれだ。

 不正受給は、過去5年で年間約1万5千件から約2万5千件(同)に急増。生活保護費の年間支出は国家予算の3・6%を占め、社会問題化している。

 一方、告発はわずか52件(同)。十分な収入や資産があると判断され、生活保護が打ち切られるケースも全体の3割弱にすぎない。

 生活保護は健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度。不正受給が発覚しても、最低限度の生活は維持しなければならず、宇都宮市の担当者は「保護を打ち切るわけにもいかず、天引きもできない」と頭を悩ます。

 また、返還の意思を示したとしても「払えて月2万~3万円が限界。少ない人は月5千円など分割して払うため、返還率は当然下がる」という。

 ◆疲弊する現場

 支給を決める自治体は、生活保護法に基づき申請者や親族の資産を調査できる。だが、同法では「調査できる」と規定しているだけで、調査を受ける金融機関側に回答義務はない。

 加えて、東京都の場合、調査権を持つケースワーカー1人あたりが担当する生活保護世帯は、社会福祉法が定める基準の80世帯を大きく上回る約120世帯。「調査にも限界があり、現場は疲弊している」(担当者)といい、「意図的に資産を隠されたらどうしようもない」という。こうした実態が、生活保護費の不正受給の温床にもなっている。

 厚労省では不正受給を防ぐため、発覚した際の厳罰化を検討。また、自治体から「告発を判断するにあたり、迷うことがある」との意見が出ていることから、国として「告発の目安」を示すため、省内で検討を始めているが「いつどういう形にまとまるか分からない」という。

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 ≪Q&A≫

 不安定な雇用情勢を反映し、受給者が右肩上がりで増える生活保護。「貧困の最後のとりで」とされる制度についてまとめた。

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 ■社会のセーフティーネット

 Q 生活保護制度とは?

 A あらゆるものを頼っても、国が定める最低生活費を下回る際に不足部分を補う制度だ。

 Q なぜ必要なの?

 A 憲法で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」を具体化するため。社会のセーフティーネット(安全網)とされている。

 Q いつから始まった?

 A 終戦後の昭和21年4月、戦災者、引き揚げ者の応急措置として始まった制度が前身。その後、貧困対策は国の責務として同年10月に旧法ができ、現行法は25年に施行された。

 Q 受けるための要件は?

 A 世帯員の全員が資力や能力を活用することが求められる。具体的には、預貯金を使い切り、土地や家屋を売却して生活費にあて、車などの財産も処分しなければならない。また、親族の援助も限界となって初めて生活保護が支給される。

 Q タレントの母親の受給でも話題になったが、親族とは?

 A 親きょうだいや子供など3親等内で、申請時に援助できないか確認が行われる。ただ、援助は強制ではなく、拒否されれば無理強いできない。

 Q 受給額はどれくらいか?

 A 地域や世帯構成によって異なるが、東京都心在住の標準世帯(33歳、29歳、4歳)で生活扶助基準額は17万2170円。これに住宅扶助費などが加算される。医療費の自己負担分なども無料になる。

 Q 支給の際の審査は?

 A 本人の通帳を基に資産の調査などが行われる。年金や就労状況も調べられる。

 Q 不正受給への対応は?

 A 疑わしいケースは銀行に照会するほか、年1回の一斉課税調査で収入を調べる。ケースワーカーが原則3カ月に1回、聞き取り調査もする。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120609-00000113-san-soci
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