Business Media 誠 10月1日(月)11時47分配信

藤田正美の時事日想:
 英エコノミスト誌最新号に面白い記事が載っている。タイトルは「Sponging Boomers」、要するに若い世代の負担でぬくぬくと暮らすベビーブーマーということだろうか。

 かくいう私もその世代の1人だ。日本の団塊の世代よりベビーブーマーの方が定義が広いが、大きな構造そのものはほぼどこの先進国でも同じだ(中国は、一人っ子政策を採用したおかげで、先進国の水準に届く前、2015年をピークに成長率にかげりが出る)。要するに我々の世代は、後の世代の負担で老後の生活を送る。だから「世代間闘争」というようなことが言われる。

 公正を期するために言うと、私たちの世代も同じように前の世代を支えてきたのである。年金にせよ、医療にせよ、ここまで制度が充実してきたのは、保険料や掛け金を払う人数が多かったからだ。つまり私たちだ。問題は、私たちの人口が極端に多かったこと、そして私たち以降の人口が減っていることにある。

 団塊の世代は、1年でだいたい260万人以上いる。今の若者はだいたい130万人ぐらいだろう。生まれてくる子どもたちは100万人ほどでしかない。この若者の人口で極端に多い人口を支えるということ自体がほとんど不可能だと思う。今、世界の先進国が国の負債の膨張に悩んでいる。ギリシャから始まった債務危機の焦点はいまスペインだ。米国も債務が増え続け、連邦政府の機能が一部停止するかどうかというところに再び来ている。その背景には、リタイアしたベビーブーマーや団塊の世代がいる。

 医療費を見てみる。2010年度の国民医療費は総額37兆円ほどだ。そのうち65歳以上の患者の医療費は17兆円弱、全体の55%を占める。そのうち9割がたは70歳以上の患者である。この時にはまだ団塊の世代は65歳に達していない。つまり、私たちが70歳になり始める5年後にはこの高齢者の医療費が急増することになる。

 医療費が増えてくるもう1つの理由は医療の進歩だ。昔なら亡くなっていたはずの患者が今では生き延びることが可能だ(延命治療という意味ではない。病を抱えたまま普通に生活する人々が増えているということである)。ガンや生活習慣病でもそういう患者が増えている。そうなれば医療費は必然的に膨らむ。これを減らすのは難しい、というより不可能だと言ってもいい。

●私たちは世代間の不公平さをどう解決していくべきか

 問題はこの負担だ。37兆円をいったい誰が払っているのか。厚労省の資料によると、公費負担が14兆円(国が約3分の2、残りが地方)、保険料で払われているのが18兆円(うち10兆円は被保険者)、患者負担が5兆円弱だ。

 保険料での支払いはすでに窮屈になっている。すでに健保組合の8割は赤字になり、解散も増えている。それは当然だ。健康保険組合の基本は、互助会だから、保険料を払う現役の人が減り、保険を使う人が増えてくれば、財政は悪化する。ここを直すために、保険料を引き上げるか、健保組合の支払いを減らすしかない。

 若い世代にとっては保険料を今以上に引き上げられるのはたまるまい。昔のように年々収入が増えるというわけではない。むしろ収入は伸びないと思った方がいい時代だ。消費税も引き上げられる中で、健康保険の保険料までもが引き上げられるというのはたまらない。そうすると、健保組合の支払いを減らすということも考えなければなるまい。

 ターゲットの1つは薬剤費(日本は諸外国に比べて薬剤費の割合が高い。37兆円の中の6兆円ほどである)。ジェネリック(いわゆる後発医薬品)の使用を勧められるのはその一環だ。もう1つは高齢者である。前にも書いたことがあると思うが、高齢者を無制限に公的保険で診療しているのは日本ぐらいのものだという。高齢者の保険診療制限というのは「カネで命を買うのか」という倫理的な問題があるため、そう簡単に結論を出せる話ではない。

 しかしこの問題にある程度の決断をしないかぎり、世代間闘争にも日本の財政問題にも決着をつけることはできない。エコノミスト誌は、ベビーブーマーがもたらした債務というツケを解消する手段は、成長促進、緊縮財政、インフレの3つがあるとする。しかし今後の医療費をはじめとする社会保障関連費用の増加を考えると、インフレは解決手段とは言えない。インフレはむしろ医療費をさらに増やす方向に働くからだ。

 世代間闘争の最先端を行く日本。私たちがこれをどう解決していくか、世界は注視している。ただ民主党も自民党も票を気にするかぎり、団塊の世代を敵に回すことになる解決策を提示することはできない。日本の政治の手詰まり感の根源はこの辺りにあるのかもしれない。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121001-00000036-zdn_mkt-ind
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