竹中 正治 2013年10月14日 10時35分

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が開示する運用資産内訳年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が開示する運用資産内訳
以前から気になっていることなのだが、なぜか目立った議論にならない問題を紹介しよう。

日本や米国、欧州主要国の公的年金は、世代間扶養、賦課方式とよばれ、積立方式とは区別されている。要するにその時の年金受取り世代の年金給付をその時の現役世代が負担する方式だ。

反対に個人や企業の民間の年金システムはほとんど積立方式で、自分(自分達)が積み立てた年金積立金を引退すると取り崩して給付を受ける。世代間扶養の賦課方式が、少子高齢化の結果、長期的に持続困難なるのは当然で、そういう指摘は昔から繰り返されてきた。

ただし日本の公的年金制度は完全な賦課方式かというとそうではないようで、120兆円に及ぶ年金積立金が年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)で運用されている。 GPIFはこの点をホームページで以下の様に説明している。

GPIF

引用:「日本の公的年金制度(厚生年金保険及び国民年金)は、基本的には、サラリーマン、自営業者などの現役世代が保険料を支払い、その保険料で高齢者世代に年金を給付するという「世代間扶養」の仕組みとなっています。つまり、現在働いている世代の人達が受け取る年金は、その子ども達の世代が負担することになります(自分が積み立てた保険料が将来年金として戻ってくる仕組みではありません。)」

「しかしながら、日本は、少子高齢化が急激に進んでいます。現在働いている世代の人達の保険料のみで年金を給付すると、将来世代の負担が大きくなってしまいます。そこで、保険料のうち年金の支払い等に充てられなかったものを年金積立金として積み立てています。この積立金を市場で運用し、その運用収入を年金給付に活用することによって、将来世代の保険料負担が大きくならないようにしています。なお、年金積立金の運用にあたっては、「長期的な観点から安全かつ効率的に運用」することを心がけています。」

***

つまり現在の120兆円余りの年金積立金は、賦課方式制度の下での少子高齢化に対応するための一種の補完であるということになる。もっとも、それでも現行の積立残高は予想される少子高齢化による年金の負担と給付の世代間格差を相殺するには十分でなく、後世代ほど負担増・給付減にならざるを得ないことは繰り返し指摘されている通りだ。

現行の積立金額では不足であることはともかく、積立金は本当に世代間の負担と給付格差の補完になるのだろうか? これが私の疑問だ。というのは以下のGPIFのサイトで示されている本欄掲載図の通り、積立金の60%は日本政府の国債で運用されているからだ。(図では「国内債券」とだけ記載されているが、ほとんどは日本国債である。)

GPIFレポート(5ページの円グラフ)

これは日本に限ったことではなく、米国では公的年金としてのSocial Security Systemの余剰金はすべてそのために発行されている連邦政府債の購入に向けられている。

しかし、よく考えてみよう。自分個人や一企業の年金ならば現在の余剰金を国債に投じて積立て、将来取り崩す(国債を売る)ことは何の問題もない。 しかし一国の公的年金もそれでOKと考えるのは一種の合成の誤謬ではなかろうか?

将来の国債の償還コストは誰が払うのか? それは将来の現役世代が税金で負担するしかないだろう。とすると・・・・積立金なしの完全な賦課方式で将来の引退世代の給付金を将来の現役世代が全部負担するのも、積立金を国債で運用してそれを将来の引退世代の給付金の支払いにあてるのも、将来の現役世代が負担するという点では同じではないか?! 違うのは将来の現役世代の負担の仕方が、年金資金の徴収の形をとるか、国債償還のための増税の形をとるかというだけだ。

従って国債(赤字国債)で運用されている積立金部分は、世代間格差の補完としては何の役にもたたないのだ。そう結論するのが論理的ではなかろうか。つまり金庫は空(カラ)ということだ。

このような問題が生じるのは、政府の赤字国債には何の資産サイドの裏付けもないからだ。ここで言っているのは赤字国債のことであるが、企業の株式や社債と異なって、政府の赤字国債には付加価値を生み出す何の資産サイドの見合いもない。返済原資は将来の現役世代の納税(増税)だけだ。

念のために言い添えておくと、財政赤字補てんのための赤字国債と違って「建設国債」の資金は公的資本形成のために使われ、公的資産(道路や橋などの社会インフラ)ができるので「資産サイドの裏付けがある」という意味で赤字国債とは一応区別できる。ただしそれでできた公的資産がどの程度有用かどうかは別の問題である。また90年代後半以降急増しているのは建設国債ではなく、赤字国債である。

「金庫がカラ」である問題を回避する方法はある。年金積立金の運用を内外の民間企業の株式、社債、並びに外国の政府債に限定することだ。民間企業の社債、株式ならば付加価値を生み出す資産の見合いに発行されるので(倒産する企業を除けば)、株式や社債の増加に見合って付加価値の供給を担う資産の増加が起こる。外国政府の債券ならば、その将来の返済原資は将来の外国の納税者のおさめる税金だ。したがって、こうした運用ならば日本国全体として考えても金庫はカラではない。

この問題は表立ってあまり議論されることなく、財政学者なども正面から取り上げていないように思うのだが・・・・それを言ったら年金制度のへの信頼を含め、これまで積み立てて来たものが全て崩壊するからだろうか。しかし崩壊し消し飛ぶのは「赤字国債で運用する積立金」という幻想に過ぎない。幻想にすがるよりも、はやく目を覚ました方が良いだろう。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/20131014-00028897/
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