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SBクリエイティブOnline 2014/9/4 09:17

65歳以降、妻の遺族厚生年金の額がぐっと減ってしまう

 前回は妻が専業主婦だった場合の遺族年金のお話をしました。しかし20代~40代の若い現役世代の方は、妻も厚生年金に加入しているような夫婦共働きも多いと思います。そこで今回は、妻も厚生年金に加入していた場合の遺族年金についてお話をしようと思います。

 なお、前回同様少し難しい話になってしまいます。特に「遺族厚生年金」の計算のところはかなり難しいと思います。遺族年金は自分で計算をしようとしてもなかなかうまくいきませんので、50歳以上の方ならば年金事務所で遺族年金の見込み額を試算してもらいましょう(共済年金は各共済組合に相談)。50歳未満の方は、年金事務所等では計算してくれませんので、「事例の夫婦のケースではいくらくらいになるのかな?」という大まかな金額のイメージを持って頂ければそれで十分です。それでは早速みていきましょう。

【夫婦共働きのケース】
夫:36歳 会社員 年収500万円 (勤続13年)
妻:35歳 会社員 年収240万円 (勤続12年)
※妻は60歳まで年収240万円、60歳から65歳までは年収120万円で65歳まで厚生年金に加入できるものとする。子どもはいない

ここで上記の夫が亡くなった場合、年金額は以下のようになります。
※大まかな計算および金額で試算しています。

(妻が65歳になるまで)
遺族厚生年金   年額 約53万円

(妻が65歳になったあと)
妻の厚生年金 年額 約54万円
妻の国民年金 年額 約71万円
遺族厚生年金 年額 約8万円
合計年額 約133万円
.
妻は働きながらでも遺族厚生年金をもらえる?

 結論から言いますと、妻は厚生年金に加入する働き方をしていても遺族厚生年金はもらえます。なお、妻の収入が極端に高い場合(妻の年収が850万円を超える、または所得が655万5千円を超える場合)遺族厚生年金はもらえないという法律がありますので注意してください。

 しかし、妻の年収が極端に高いというケースは少ないでしょうから、夫が亡くなったあとは「遺族厚生年金と妻本人の給料で生活をするようになる」と考えておけばよいと思います。

 それではここから遺族厚生年金の金額をみていきましょう。今回のケースの夫が亡くなった場合、遺族厚生年金を本来通りの計算式で計算すると年額約27万円。しかし実際には遺族厚生年金として年額約53万円がもらえます。一体これはどういうことなのでしょうか?

 その理由は「厚生年金に加入中の方が亡くなった場合、厚生年金の加入期間が25年(300カ月)に満たないときは25年加入したものとみなして遺族厚生年金を計算しますよ」という法律があるからです。したがって、今回のケースの遺族厚生年金は13年で計算するのではなく25年で計算してくれるのです。

 厚生年金の加入期間が極端に短いと遺族厚生年金の金額はとても少なくなってしまいます。しかし「25年(300カ月)のみなし」を適用することによって遺族厚生年金はある程度の金額になります。残された遺族への配慮といえるでしょう。

 なお、会社員の夫が亡くなった当時妻が40歳以上であれば、妻が65歳になるまで「中高齢寡婦加算」という手当が加算されるということは前回学びました。今回のケースでは夫死亡当時、妻は35歳。残念ながらこの妻には中高齢寡婦加算は支給されません。

 以上から、夫が亡くなったあとの当面の収入は、遺族年金約53万円と妻の給与収入240万円を合わせて約293万円。月額にすると約24万円になります。夫婦共働きのときの収入と比べると半分以下ですが、このケースでは子どもはいないので、妻ひとりであれば何とか生活できる金額だと言えるでしょう。

厚生年金に加入していた妻が65歳になると年金はどうなる?

 次に妻が65歳になったあとの年金額をみてみましょう。今回のケースで妻がもらえる自分の厚生年金は約54万円、国民年金は約71万円です。そして遺族厚生年金は約8万円になります。月額ではなく「年額」約8万です。妻が65歳になるまでは遺族厚生年金は約53万円だったのに、65歳以降はなぜ約8万円になってしまったのでしょうか? 実はこれも法律が関係しているのです。

 平成19年4月1日以降に遺族厚生年金が発生した場合、以下のようになります。

(1)65歳以降は、まず自分の老齢年金をもらう(今回のケースでは妻本人の老齢年金)
(2)65歳以降の遺族厚生年金は「丈比べ(たけくらべ)」という計算をする
(3)丈比べ後の遺族厚生年金から本人の厚生年金を差し引き、差額が出ればその分が遺族厚生年金としてもらえる

 これだけではよくわからないと思います。そこで今回のケースではどうなるのかひとつずつみていきましょう。

(1)65歳以降は、まず自分の老齢年金をもらう(今回のケースでは妻本人の老齢年金)
 遺族厚生年金をもらっている妻が65歳になると、まずは妻本人の老齢年金をもらうことになります。今回のケースでは、妻の厚生年金が約54万円、国民年金は約71万円です。

(2)65歳以降の遺族厚生年金は「丈比べ(たけくらべ)」という計算をする
 以下の二通りで計算をし、金額の多い方が遺族厚生年金の金額になります。

・原則の式で計算
 原則の式で計算をすると、今回のケースでは遺族厚生年金は約53万円になります。

・原則の式で計算した遺族厚生年金×2/3+妻の厚生年金×1/2
 原則の式で計算した遺族厚生年金 約53万円
 妻の厚生年金 約54万円
 よって、約53万円×2/3+約54万円×1/2=約62万円となります。

 丈比べをした結果、妻65歳以降の遺族厚生年金は約62万円になります。この約62万円は差額計算前の遺族厚生年金です。この金額がまるまるもらえるわけではありません。

(3)丈比べ後の遺族厚生年金から本人の厚生年金を差し引き、差額が出ればその分が遺族厚生年金としてもらえる
 妻本人の厚生年金が支給される場合、遺族厚生年金は以下のように計算されます。
 (丈比べ後の遺族厚生年金)-(妻本人の厚生年金)
 =差額が出れば、その分が遺族厚生年金として支給される

 今回の事例で計算してみましょう。
 丈比べ後の遺族厚生年金 約62万円
 妻本人の厚生年金 約54万円
 (丈比べ後の遺族厚生年金)-(妻本人の厚生年金)
 =約62万円-約54万円
 =約8万円

 差額が約8万円出たので、この8万円が遺族厚生年金として妻に支給されます。

 以上のことから、妻が65歳になると厚生年金が約54万円、国民年金が約71万円、遺族厚生年金が約8万円で、合計約133万円。月額にすると約11万円になります。

 妻が65歳以降に働かないとすると、収入は年金のみになります。月額約11万円で生活をするのは厳しいでしょうから、万が一夫が亡くなったときの備えをどうするのか、あらかじめ夫婦で検討しておきましょう。

妻が厚生年金に加入すると本当に損なのか?

 実際の相談現場では「妻が厚生年金に加入していたら遺族年金はその差額しか出ないわけですよね。それって損ですよね。専業主婦の方が有利なんじゃないですか?」とおっしゃる方が意外と多くいらっしゃいます。

 しかし、本当にそうなのでしょうか?

 仮に今回のケースの妻が専業主婦(厚生年金に加入したことがないパート主婦含む)だった場合で考えてみましょう。

 妻が65歳になったあと、妻の年金収入は遺族厚生年金と妻本人の国民年金だけになります。この妻には本人の厚生年金がありませんから、丈比べも差額計算もありません。よって遺族厚生年金は約53万円になります。国民年金の方は、夫が亡くなったあとは保険料の免除申請を利用するでしょうから(おそらく全額免除に該当するでしょう)、年額約40万円から50万円くらいになると思われます。そこで、ここでは妻の国民年金は約45万円としておきます。

 以上のことから、専業主婦だった妻が65歳になったあとの年金は、遺族厚生年金が約53万円、国民年金が約45万円で合計約98万円。月額にすると約8万円になります。

 ここで65歳以降の年金額を比較してみましょう。

・厚生年金に加入していた妻の場合
妻の厚生年金 年額 約54万円
妻の国民年金 年額 約71万円
遺族厚生年金 年額 約8万円
→合計 年額 約133万円(月額 約11万円)

・専業主婦(厚生年金に加入したことがないパート主婦含む)の場合
妻の国民年金 年額 約45万円
遺族厚生年金 年額 約53万円
→合計 年額 約98万円(月額 約8万円)

 確かに妻が厚生年金に加入していると、遺族年金は差額しか出ないので損をしているようにも見えます。しかし、トータルの年金額で比較すると、妻が厚生年金に加入していた方が多くもらえるので、一概に損をしているとは言い切れないと思います。この辺の感じ方は人それぞれの価値観によるものなので、はっきりとした正解は出てこないのですが...。

 実際の相談現場では「私の年金は他の人と比べて少ない。ひどいじゃないか」といったようなこともしばしば聞かれます。一人ひとりの人生が違うように、公的年金もひとりひとり違います。厳しい言い方になってしまいますが、自分の歩んできた人生を他人の人生と比べて喜んだり落ち込んだりしてもあまり意味がないように、公的年金も他人と比べて得している、損していると言っても意味がありません。

 公的年金は本人が亡くなるまでずっともらえる大切なお金です。その大切なお金にケチをつけるのではなく、「足りない部分は他で補おう」というくらいの覚悟を持ち、できれば何かしらの対策まで考えてもらえば、自分の人生に責任を持つかっこいい大人だと言えるのではないでしょうか。

(遺族厚生年金の大まかな計算)
年収500万円÷12×5.769/1000×25年×12カ月×1.031×0.961×3/4=年額 約53万円

(妻の厚生年金の大まかな計算)
(年収240万円÷12×37年×12カ月+120万円÷12×5年×12カ月)×5.769/1000×1.031×0.961=年額 約54万円

(妻の国民年金の大まかな計算)
約77万円×37年/40年=年額 約71万円
※20歳から60歳までの間で厚生年金に加入していた期間のみで計算

※金額は平成26年度価額です。
※本来は、平均標準報酬月額(平成15年3月以前のもの)および平均標準報酬額(平成15年4月以降のもの)を用います。また、給付乗率も平成15年3月以前と4月以前では異なっていますが、5.769/1000でまとめて計算しています。

【監修】浜田裕也
学習院大学理学部数学科卒。大学卒業後、塾講師(対象の生徒は小・中学生。数学と理科を担当)を経てファイナンシャルプランナー(CFP)へ転身。ファイナンシャルプランナーとして活動を続ける中、社会保障、特に年金制度に興味を持ち始め社会保険労務士の資格も取得。その後、社会保険労務士会の業務委託で年金事務所にて年金に関する相談も受けるようになり、相談件数は年間1,000件を超える。複雑な年金制度の解説や具体的な申請手続きの進め方のアドバイスには定評がある。老後の生活設計や将来の年金額のシミュレーションなどの記事が「週刊東洋経済」や「プレジデン」トなどに掲載されるほか、監修として『日本でいちばん簡単な年金の本』(洋泉社 第3章監修)、『転職したり、フリーランスだったり、離婚を経験した人は知らないと損する、年金の話』(SB新書)などがある。

http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20140904-00010000-biz_sbcr-nb
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