現代ビジネス 3月6日(金)6時1分配信

 夫の定年退職で損をする/熟年離婚で損をする/夫が死んで損をする/おひとり様で損をする/これでは女房もかわいそう

 高齢女性の貧困率が高まっている。夫との死別や離婚により、年金受取額が思った以上に少ないことがその一因だ。「女の一生」はかくも険しい。老後を豊かに過ごすために、今から備えることが肝要だ。

熟年離婚、その前に
 「厚生労働省が発表しているサラリーマン世帯の標準的な年金支給額は月額22万1507円('15年度の金額・以下同)。これなら、住宅ローンさえ終わっていれば夫婦二人で暮らしていけるかもしれません。ところが、実態はそうではない。私はこれまで多くの老年夫婦の年金額を試算してきましたが、このモデルケースよりも少ない場合がほとんどです。多くの方が『そんなに少ないんですか! ?』と驚かれます。

 その原因の一つに妻の年金をきちんと把握していないことがあるのです」(ライフカウンセラー・紀平正幸氏)

 定年退職後は年金を生活費に充てて暮らしていく。そう思い描いている家庭がほとんどだろう。だが、実際にいくらもらえるのか、正確に試算したことはあるだろうか。

 サラリーマン男性の場合は、国民年金と厚生年金の加入期間や支払ってきた保険料から比較的簡単に試算できる。ところが女性は専業主婦なのか、就労期間があったのか、きちんと手続きを行ってきたかなどの条件で、さまざまなパターンに分類され、いくらもらえるのか、男性と比べて非常にわかりにくい。そして多くの場合、女性は男性より長生きするにもかかわらず、年金で「損」をしてしまうのだ。

 現在60歳のある女性は胸の内を吐露する。

 「夫は定年まで勤めたサラリーマンで、モデルケースくらいの金額をもらえるものだと思っていたんです。ところが、'86年までは主婦の国民年金への加入は任意で、私が入っていなかったことが判明しました。そのため、私の国民年金は満額に満たない年額40万円。

 しかも夫は昨年64歳で先立ってしまい、一人暮らしになりました。受け取っている年金は、遺族厚生年金と合わせて月額10万円程度。今はなんとか暮らしていけますが、この先、私が大病を患ったり、事故に遭ったりしたら生活はどうなるのかと不安で堪りません」

 実際、夫を喪うか、離婚するかして単身で暮らす高齢女性の貧困化が社会問題となっている。'12年の国民生活基礎調査によると、実に65歳以上の単身女性の貧困率は44・6%という驚くべき数字なのだ。

 女性が年金で損をするポイントがわかれば、今から夫婦で備えることもできる。それぞれのケースごとに見ていこう。

 ◎夫の定年退職で損をする

 現在53歳のA子さんは短大卒業後に24歳で7歳年上の会社員と結婚。専業主婦として家庭を支えてきたため、これまで自分で保険料を支払う必要はなかった(結婚前は親が払っていた)。

 今年、夫が定年退職を迎え、再雇用も希望しなかった。この場合、うっかりしているとA子さんは損をする。

 「すべての国民は60歳になるまで、なにかしらの公的年金に加入することが義務付けられています。これまで被扶養配偶者であったため、支払いを免れていたA子さんは自分で手続きをして、国民年金に入り直さなくてはなりません。保険料は年間18万7080円。夫の収入がなくなるわけですから、決して安い金額ではありません。

 これを60歳まで7年間支払ったとして、A子さんが受け取れる年金は65歳からで、年額78万100円。国民年金への加入手続きを怠れば、この年金額が減らされます」(社会保険労務士・井戸美枝氏)

 こうした主婦は50万~60万人にも上り、厚労省は救済に乗り出した。未納分は本来2年分しか遡って払えないが、対象者は'18年3月まで最大10年分を追納できる。

 現在、企業には段階的に希望者の雇用延長が義務付けられている。A子さんの夫も60歳でリタイアしてしまうのではなく、できる限り長く会社に残ったほうがよさそうだ。井戸氏が続ける。

 「待遇は変わるでしょうが、夫が厚生年金に残ることができれば、その間、A子さんは国民年金の保険料を支払わずに済みます。それでいて受け取る年金額は、保険料を支払った場合と同じ額です。逆に言えば、サラリーマンの夫を持つ専業主婦は、夫が働き続ける限りは『おいしい』身分にあると言えるのです」

 妻の年金という観点からみれば、夫には少しでも長く企業に勤めてもらったほうがトクなのだ。

 ◎熟年離婚で損をする

 「ここ数年、夫の定年退職が近づいてくると離婚を考える女性が増えています。夫が働いている間は経済的な問題から離婚を踏みとどまってきましたが、退職後は夫に稼ぎがあるわけでもなく、一緒に過ごすことが苦痛。『年金分割』という制度もあると耳に挟んで、夫に内緒で相談に来る人もいます」(前出・紀平氏)

 B子さんは20歳で同い年の男性と結婚し、専業主婦として40年間連れ添ってきた。パートに出たこともあったが、年収は130万円未満に抑えてきたため、厚生年金には加入していない。つまり、B子さん個人が手にする年金は、65歳からの国民年金、年額78万100円だけだ。

 B子さんは離婚をしても夫の年金を半分もらえる制度があることを知り、夫と一緒でなくとも、暮らしていけるのではないかと考えた。特定社会保険労務士・長沢有紀氏が解説する。

 「'07年から離婚時の『年金分割』という制度ができました。これは夫婦間の話し合いで、婚姻期間中に夫が支払ってきた保険料に応じた厚生年金を最大で半分に分割できる制度です。さらに翌'08年には『3号分割』といって、専業主婦が自動的に厚生年金の半分を手にすることができる制度も始まりました。とはいえ、自動分割の対象は、'08年4月以降の厚生年金記録に対してのみです」

 離婚しても保険料を一銭も払うことなく、年金を半分もらえるなら、と考えるのは早計だ。仮にB子さんが、夫の厚生年金の半分を受け取れることになったとしよう。厚生年金の一般的な金額は月額10万円。これを二分割するのだから、B子さん個人の国民年金と合わせても、月額11万円程度。

 B子さんの希望で離婚をするのだから、当然、慰謝料は期待できない。住宅や貯金などの財産分与はあるが、コツコツと貯金してきたヘソクリを逆に夫に取られる可能性もある。

 「さらに離婚と同時に年金がもらえると勘違いしている女性もいるようですが、それは誤解です。通常の年金と同じで65歳にならなければもらえません。現在60歳のB子さんは5年間無収入になる可能性があるのです。年金のことを考えるなら、家庭内別居で我慢するのが損をしない方法かもしれません」(前出・井戸氏)

子供の年齢のせいで減額に
 ◎夫が死んで損をする ~サラリーマンの場合

 夫が在職中に急死した場合、大黒柱を失った家庭は生活に窮する。もちろん、遺族年金制度があるため、妻はそれなりの金額を受け取ることはできる。前出のA子さんの場合、夫の平均月収が38万円だったので、受け取れる遺族厚生年金は年間約92万6000円(夫が生きていれば受け取れた厚生年金額の75%)。

 65歳になるまでは、ここに中高齢寡婦加算が年額58万5100円追加される。65歳以降は中高齢寡婦加算に代わって、老齢基礎年金78万100円がプラスされる。夫が家を残した場合は何とか自活できそうだ。

 問題は、19歳以上で未就労の子供を残して、夫が死んだパターンだ。専業主婦のC子さん(45歳)は、21歳と19歳の大学生の息子がいる。彼女は今年9歳年上の夫をがんで亡くした。夫は自動車ディーラー勤務で、年収は800万円。貯金の大半が夫の闘病生活に費やされ、今は400万円しか残っていない。保険嫌いだったため、生命保険にも入っていなかった。

 18歳以下の子供がいる場合、国民年金の加入者には遺族基礎年金が支払われる。その額は年78万100円に加えて、1子ごとに22万4500円が加算される(2子まで。3子以降は各7万4800円)。

 ところが、子供が19歳を超えていると、遺族基礎年金は一切支払われない。したがってC子さんが受け取れる年金は、遺族厚生年金と前出の中高齢寡婦加算だけとなる。18歳以下の子供がいる場合と比べて、大きな差が出てしまうのだ。

 「私が受け取っている年金は、トータルで月に12万円程度です。夫の死亡によって住宅ローンは完済され、自宅だけは確保できましたが、息子たちを大学に通わせようとしたら、私が働くしかありません。ただ、手に職があるわけでもなく、できることはスーパーのレジ打ちか、ファミレスでの接客くらい。子供たちにもバイトをするように言っています。まさか遺族年金がここまで少ないとは思ってもみませんでした」(C子さん)

 会社員の夫を持ち、共働きだったD子さんの場合も、夫を亡くすと金銭的に大きな損失を被る。

 D子さんは大学卒業後すぐに就職し、結婚後も60歳まで働き続けた。平均月収は30万円で、65歳から受け取れる年金は厚生年金と国民年金を合わせて、年約177万円。これに夫の年金が年に約200万円(月収38万円として計算)加わる。夫婦二人で月額約32万円となり、すでに住宅ローンを返している場合は老後の心配はない―そう考えていた。

ハケンの年金はどうなる
 ところが夫が亡くなり、世帯収入はグッと減ってしまった。

 「夫の遺族厚生年金を受け取れますが、その額は年間数万円程度にすぎません。というのも、年金には『一人一年金』という原則があるためです。複数の年金を受け取る資格がある場合、すべてを満額受け取ることはできないのです。夫の遺族厚生年金は、あってないようなものになってしまう。D子さんの場合は、月額約15万円程度の年金で暮らしていかなければなりません。夫を亡くした専業主婦と年金の額はあまり変わりませんね」(前出・井戸氏)

 共働きのD子さんの場合、夫が40年近く支払ってきた保険料を受け取ることもできないのだ。

 ◎夫が死んで損をする ~自営業者の場合

 ここまでは、サラリーマンを夫に持つケースを見てきたが、自営業者の夫を持つ女性の場合はどうだろうか。

 会社に勤める人間と違って、自営業者に用意されている公的年金は国民年金しかない。40年納付し続けてきたとしても、満額で65歳から78万100円が受け取れるだけ。月額にして6万5008円、夫婦二人で約13万円。しかも、夫が死ねば、その分の支給はなくなってしまう。

 「現在の国民年金保険料で計算すると、夫婦で計1496万円の保険料を支払って初めて、65歳から満額の国民年金を受給できます。一方で会社員の夫を持つ専業主婦は、保険料を一銭も払わずに国民年金を受け取ることができます。現行の制度では厚生年金加入者に比べて、自営業者は損をしていると言わざるを得ないですね」(社会保険労務士・和田雅彦氏)

 自営業者の夫と離婚したところで分割される厚生年金もない。また、会社員の夫が亡くなったら、遺族厚生年金が妻には支給されるが、国民年金では18歳以下の子供がいる場合に限られる。夫と別れたら、妻は自分の分の国民年金、月額約6万円で暮らしていかなければならないのだ。

 ◎おひとり様で損をする

 女性の単身世帯が年代を問わず増えている。彼女たちはどのような年金を手にするのだろうか。

 バツイチのE子さんは55歳。職を転々とし、今はフリーランスのデザイナーとして生計を立てている。彼女の経歴はこのようなものだ。

 大学卒業後、22歳で企業にフルタイムで勤めた。28歳で結婚し、夫の扶養家族に。38歳で離婚し、派遣会社に勤めて41歳までいくつかの職場を回った。42歳で独立したものの、体調不良もあって生活が安定せず、44歳まで国民年金の免除申請を出していた。その後も10年間、45歳からダラダラと国民年金の未納が続いている。

 E子さんがまず気をつけるべきは、自分の年金記録の確認だと前出の和田氏は言う。

 「これは女性ならではの問題で、結婚して姓が変わるため、年金記録が別々に記録されているケースが多いのです。旧姓と結婚後の姓を一本化しないと、結婚前の年金記録が宙に浮いた状態になってしまいます。さらに離婚して旧姓に戻ると、その記録も宙に浮いてしまう可能性がある。日本年金機構が提供しているウェブサービス『ねんきんネット』や各地の年金事務所で確認できます」

これでは暮らしていけない
 厚生年金の加入記録が明らかになったとして、E子さんはいくらもらえるのか。

 「国民年金の保険料を支払っていれば、1年間で2万円ほどの年金が積み立てられていきます。彼女の場合は、22歳から42歳になるまでの20年間は支払っていますので、約40万円。さらに厚生年金に加入していたときの年収をそれぞれ300万円と仮定して計算してみると、厚生年金は1年間で1・5万円ずつ増えていきますので、就労期間が8年で12万円。概算ですがE子さんが65歳以降に受け取れる年金は年額52万円となります。

 ただし、年金加入期間が免除期間を合わせて25年間に1ヵ月でも満たない場合は1円も支払われないことになる。E子さんの時代、20歳以上の学生は『任意加入』で保険料を支払っていなくても加入期間に算入できるので大丈夫そうですが、一度、きちんと精査したほうがいいでしょう」(前出・長沢氏)

 もし、25年に満たない場合、E子さんは老後、「無年金」になってしまう。今年9月まで特例として過去10年に遡って国民年金保険料を後納できる制度が用意されている。1円も手元に入ってこない事態を避けるためにも、最低25年の加入期間を確保したほうがいいだろう。とはいえ、それでも年額は50万円程度だ。

 「女性一人がこれで生活をするのは、実質的に不可能です。元気なうちは働くこともできるでしょうが、80歳を超えたら仕事を探すこともできない。最終的には生活保護に頼るしかありませんが、先祖から受け継いだ土地があれば申請は認められない場合もあり、子供がいれば、『子供を頼れないのか』と尋ねられる。結局、貧困状態を続けるしかない高齢の単身女性が増え続けることになるのです」(経済ジャーナリスト・岩崎博充氏)

 夫が死んでも、離婚しても年金の面でオンナはトクをすることはない。これでは女房がかわいそう、と思う夫は、生きているうちに対策を始めたほうがいいだろう。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150306-00042305-gendaibiz-bus_all
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