時事通信 6月15日(月)15時57分配信

 国政での社会保障をめぐる与野党対決は付き物で、改革のスピードが上がらない最大の理由でもある。特に年金については、「現行制度は破綻している」と新制度を求める主張も出され、一時は大論争となった。年金や医療、介護は国民の関心が高いテーマだけに、政争の具にせず、より良い制度に向けた本質的な議論が求められている。
 ◇政権揺るがす「年金破綻論」
 最近の年金をめぐる議論は2004年の制度改革をきっかけに過熱した。
 04年改革では、現役世代が納める保険料率の上限を定め、負担にキャップをかぶせた。他方で、高齢者が受け取る年金支給水準を徐々に減らしていく「マクロ経済スライド」を導入し、保険料収入と年金支払いを釣り合わせる仕組みを盛り込んだ。年金財政の安定化を目指すものだった。
 ところが、関連法案の国会審議は紛糾し、強行採決で決着した。当時、改革を主導した坂口力元厚生労働相は「『年金をがたがたにした』と、ものすごい批判を受けた」と振り返る。04年改革による制度改善を目指した自公政権と、「年金破綻論」を主張する民主党が激しく対立した。
 法成立後は、年金保険料の納付記録漏れが発覚した「消えた年金問題」などで、年金事務を扱う旧社会保険庁の怠慢ぶりも露呈。自公政権への逆風が強まり、09年の民主党による政権交代の一つの要因となった。
 ◇今こそ前進の時
 しかし、政権を取った民主党は、消費税率引き上げを含む社会保障と税の一体改革に取り組む中で、現行の年金制度をベースに見直しを進める姿勢に変わる。当時の野田佳彦首相ら政権幹部も「現行制度が破綻している、あるいは将来破綻するということはない」と国会で答弁。12年に再び自公政権が復活したが、かつてのような論争はない。
 年金に詳しい権丈善一慶応大教授は、こうした政治環境を捉え、冷静な議論ができる今こそ制度改革を進めるべきだと訴える。「高齢期の所得保障政策という意味で、大量の生活保護受給者が発生しないようにしなくてはいけない」と指摘。デフレ時には発動しないルールとなっているマクロ経済スライドを毎年度実施するなど、さらなる制度の見直しを求める。
 ◇「連帯の制度、我慢も」
 社会保障制度の維持に向けて、世代間格差問題も避けて通れない。若者にとっては、年金、医療、介護などで受け取る給付より、支払う保険料の方が多いから「損だ」という議論だ。
 政府は、損得感情が社会保障への不信感をもたらしかねないと懸念して、対応に乗り出している。政府の社会保障制度改革国民会議が13年にまとめた報告書では、「給付と負担の両面にわたる世代間の公平」を求めた。その背景の一つに、社会保障制度の支え手となる現役世代の負担が限界を迎えつつあるとの見方がある。
 例えば、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度は、現役世代からの支援金に大きく頼っているが、少子高齢化の流れが止まらず、支援金負担は重みを増すばかり。政策研究大学院大学の島崎謙治教授は「このままでは国民皆保険が崩壊してしまうという共通認識に立つべきだ」と語り、負担の在り方について議論を急ぐよう呼び掛ける。
 こうした中で、政治的に難しいとされてきた高齢者の給付カットや負担増がタブーではなくなってきている。今年8月には、一定の所得がある高齢者を対象に介護サービスを利用した際の自己負担割合を1割から2割に引き上げる。
 ただ、世代間格差の是正を議論する際、世代間対立に陥らないような慎重さも求められる。社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の会長を務める医療経済研究機構の西村周三所長は「社会保障制度は社会の連帯の制度だから、高齢者も若い世代もお互いが我慢しなければいけない」と指摘。高齢世代はかつて経験したような高度成長時代とは異なり、社会保障を取り巻く経済環境が厳しいことを理解し、現役世代は国民の長寿化により負担が増えざるを得ない点に納得するなど、相互に歩み寄る必要性を説く。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150615-00000061-jij-soci
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2015.06.20 Sat l 年金 l top ▲