ダイヤモンド・オンライン 7月15日(水)8時0分配信

● 個人型DCは「退職金のように受け取る」か 「年金のように受け取る」かで税制が異なる

 「投資の儲けの足を引っ張るのは“手数料と税金”」と言われる。効率的に運用益を手にするには、手数料が安く、非課税など税金のメリットのある商品を選ぶべきというのが投資の鉄則だ。

 前回、「国が旗を振る“じぶん年金作り”制度は利用価値があるか」というテーマで取り上げた「個人型DC(確定拠出年金)」は、民間の金融商品に比べ節税メリットが大きい制度であるため、老後資金作りをするなら最優先に検討したい。

 節税メリットは3つあると言われている。

 まず、掛金は全額所得控除の対象となり、その年の所得税と翌年の住民税が軽減される(節税メリット①)。貯蓄や投資をして税金が安くなるとは、うれしい制度だ。運用期間中に発生した収益は非課税になる特典もある(節税メリット②)。この2つは文句なしにメリットと言える。

 3つめとして「受取時にかかる税金にも節税の仕組みがある」と言われるが、私は受取時の税制は必ずしも節税メリットと言い切れないと思っている。将来、老後資金として受け取るときに「え~、こんなに税金かかるって聞いてない! 」といった事態にならないように、課税の仕組みを知っておきたい。

 個人型DCの受け取り時の税金は、一時金で受け取るなら「退職所得」扱い、年金受取なら公的年金のように「公的年金等控除」が使える。問題点を知るには2つの課税の仕組みを知る必要があるので、ちょっと面倒に感じるかもしれないが、説明におつきあいいただきたい。

● まずは「退職所得控除」と 「公的年金等控除」の仕組みを理解! 

 退職金一時金にかかる税金は、勤続年数に応じた非課税枠が設けられている。最初の20年間は1年あたり40万円、21年目からは1年あたり70万円。これを積み上げた金額が退職所得控除で、みなし経費として退職金収入から差し引くことができる。これが退職所得。それに2分の1かけた金額に対し所得税と住民税がかかる仕組みだ。ケースで見てみよう。そのほうがわかりやすい。

【勤続38年で退職金2000万円受け取った人の手取り額は2000万円】
 1)退職所得控除:40万円×20年+70万円×18年=2060万円
 2)2000万円-2060万円=▲60万円
 3)退職金は退職所得控除の範囲内なので、税金はかからず、手取りは2000万円

 【勤続20年で退職金1000万円を受け取った人の手取り額は985万円】
 1)退職所得控除:40万円×20年=800万円
 2)(1000万円-800万円)×1/2=100万円
 3)所得税:5万円、住民税:10万円
 4)退職金の手取り:1000万円-(5万円+10万円)=985万円

 (※計算過程に復興増税は考慮せず)

 退職金の税制は、かなり有利であることがわかる。しかも「分離課税(退職金だけ単独で税金の計算をする)」なので、退職金を受け取った年の給与収入の税率が高くなる心配もない。

 また、退職金を年金受け取りにした場合、一時金と同様にみなし経費を差し引くことができる。それが「公的年金等控除」だ。

 たとえば、厚生年金と退職金の年金受取の合計額が年300万円とすると、300万円すべてに課税されるわけでない。300万円の収入だとみなし経費の公的年金等控除額は120万円なので、300万円-120万円=180万円が雑所得として課税される(65歳以上のケース)。

● 「退職所得控除」を利用する場合、 退職金と個人型DCは“合算して課税”になる

 このように退職金税制は、税制のなかでは珍しく(? )納税者に優しいものであるが、個人型DCに転用するのは必ずしも“いいこと”ばかりとはいえない。注意点を知っておこう。

 「個人型DC」のほかに、勤務先から退職一時金があると合算されて税金を計算するため、所得税率が高くなるケースがある。退職所得の税金を計算するうえでのみなし経費となる「退職所得控除」の年数は、複数の退職金それぞれで使えるわけではない。

 事例で見てみよう。会社員Aさんは60歳になり、会社から(ア)退職金2000万円、それとは別に自分で掛けていた(イ)個人型DCを500万円受け取る。

 (ア)会社から退職一時金:2000万円…勤続年数30年(30歳~60歳)
 (イ)個人型DC:500万円…加入期間20年(40歳~60歳)

 ここで注意したいのは、退職所得控除はそれぞれに使えるわけでないということ。控除を別々に使えると思っていると、次のような計算になる。

 ①【控除を別々に使えると思い計算すると…】(間違っている計算方法)
 ア)退職一時金
 (収入2000万円-退職所得控除1500万円)×1/2=250万円…退職所得
 所得税:15万2500円/住民税:25万円
 イ)個人型DC
 (収入500万円-退職所得控除800万円)×1/2=所得ゼロなので税額もゼロ

 ①の税額:40万2500円

 退職一時金と個人型DCを同じ年に受け取ると、「合算して課税」されるので上記は間違い。正しくは次のように計算する。

 ②【合算して課税すると】(正しい計算方法)
 ※同年受け取りの場合、退職所得控除は、複数退職金のうち最も長い勤続期間(または加入期間)で計算する。長いほうの30年が使えるので、退職所得控除額は1500万円
 {(2000万円+500万円)-退職所得控除1500万円}×1/2=500万円…退職所得
 所得税:57万2500円/住民税:50万円

 ②の税額:107万2500円

 ①と②の税額の差は、67万円にもなる。思い違いをしていると、それだけ手取り額が減ってしまうということ。退職一時金と個人型DCを合算すると退職所得が多くなり、所得税の税率が高くなる点にも注意したい。

● 受け取る年を退職金とずらして 先送りすると税金は減る? 

 では、受け取る年をずらすとどうなるのか。先の事例で、60歳時に退職一時金を受け取ったのち、運用指図者として65歳までDCを続け、一時金受け取りすると、退職所得控除の年数は次のようになる。

 ③【60歳で受け取る2000万円の退職一時金の控除期間と税額】
 退職所得控除の期間:30年
 ③の税額:40万2500円

 ④【65歳で受け取る500万円の個人型DCの控除期間と税額】
 退職所得控除の期間:0年
 (前年以前14年以内に退職一時金を受け取っていると、加入期間が重複している年数を差し引く…個人型DC加入期間20年-重複期間20年=ゼロ年)
 ④の税額40万2500円

 ③+④の税額合計 80万5000円

 DCを受け取る時期をずらしても、60歳時に退職金受取時に退職所得控除を使い切ってしまっているので、65歳でDCの税金を計算する際の退職所得控除の期間は「ゼロ年」となってしまう。60歳以降、「運用指図者」としてDCを続けたとしても、退職所得控除の期間には算入されないのである。ややこしい税制ルールがいくつもある! 

 では、どうすればいいのか。先の個人型DCの受け取りを5年先送りするプランの税額は、60歳時の退職金の税額と合わせると80万5000円なので、②の60歳時に一度に受け取るときの税金よりも少なくてすむ。ただし、すべてのケースにおいて「個人型DCの受け取りを先送りするプラン」が有効とは言えるわけではない。勤続年数やDC加入期間、受け取る金額により、有利、不利が大きく変わってくるからだ。

 もうひとつの対策として、個人型DCを「年金受け取り」にする方法がある。しかし、この場合も年金受け取りするほうが有利になるかどうかはケースバイケース。DCの積立金が多額だと、1年あたりの雑所得も多くなり、リタイア後の国民健康保険や介護保険の保険料負担が増すデメリットも考えられる。

 税額計算のルールを知り、受け取り時に試算のうえ、有利な選択を自らしなくてはならないのは、普通に暮らしている人にとってハードルが高い。個人型DCは受け取り時にも有利というより、むしろ大きな落とし穴があると言えるだろう。

 筆者はこの原稿を書くにあたり、DCの税制を細かく調べたが、読者のみなさんに最後まで読んでもらえるように税制ルールについてはかなり端折って書いている。それでも「面倒なルールがある」「細かい部分の意味がわからない」という感想を持っていただけることと思う。

 これほど複雑な税制ルールを課しているのだから、国税庁か厚生労働省は個人型DCの加入者に、どういう受け取り方法が有利なのか試算できるサイトを提供すべきだ。税金が安くなる選択ができるシミュレーターを、国税庁が作るわけがない気もするが、あきらめずに言い続けていきたい。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150715-00074950-diamond-soci
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