ダイヤモンド・オンライン 8月26日(水)8時0分配信

● 年金生活者の家計の 赤字額はさらに拡大している! 

 先日、総務省が行っている家計調査の2014年版が発表になった。家計の収入と支出を通じて個人消費を捉えることができる統計で、平均値とはいえ、参考になる資料だ。

 このうち、私が必ず目を通すようにしているのは「高齢者の家計収支」の調査結果だ。年金生活者向けの家計簿を毎年作っていることから、高齢者の家計の変化は知っておきたいし、40~50代の人に「年金生活」をイメージしてもらうときの参考にもなる。資料を見ていて目に留まったのが、下のグラフだ。読者のみなさんは、このグラフをどう読み解くだろうか。

 私は、「平均消費性向の推移」というタイトルを見て、「消費支出は年々増加しているのだな。2011年から消費性向が右肩上がりなのは、お金を使うのが好きな団塊の世代が“高齢無職世帯”になったからだろうか」などと考えた。

 グラフ周りに目をやると「平均消費性向とは、可処分所得(手取り収入)に対する消費支出の割合」と説明があった。つまり、100%を超えた部分は「収支赤字」で、その分は貯蓄等を取り崩して生活をしているということだ。“消費支出”だけの傾向と考えた先の私の所見は、恥ずかしながら的外れであった。

 消費性向が示すように年金生活者の家計収支は毎年拡大している。次のグラフは、夫が65歳以上の無職の高齢者夫婦の家計収支の推移である。収支結果は、この連載の第16回でも取り上げ、その際「年間収支の赤字額は3年前より20万円拡大! 」と書いたが、2014年の最新データでは赤字額は前年よりさらに5万円増え、年間マイナス74万円にもなる。

 赤字がどんどん増える原因を知りたい。家計調査年報だと、毎年の詳細なデータがわかるが、それぞれの項目についての推移を知ることはできないので、エクセルに毎年の調査結果の数字を入力して分析してみた。

 過去10年分の数字を並べてみた結果、最も影響が大きかったのは年金収入の減少だ。支給額は10年前に比べて約10%減っている。意外だったのは、消費支出は10年間ほぼ横ばいであったこと。年金収入が減り続けても、暮らしぶりはそう簡単に変わらない、変えられないということだろうか。

 調査では「非消費支出(所得税・住民税、健康保険料・介護保険料)」が、思ったより増えていないことが疑問である。私の試算だと、年金生活者の税・社会保険料は確実に負担が増している。

 調査項目には「額面の年金収入」「非消費支出」「消費支出」がそれぞれあるが、介護保険料や後期高齢者の健康保険料は年金から原則天引きのシステムのため、天引き後の年金を「額面の年金収入」だと思って調査シートに記入しているのかもしれない。天引きされる保険料は毎年のように上がっているし、自治体によっては年金から住民税を天引きするところも出てきているので、「年金の振込額=額面の年金収入」と思い違いをして記入すると、「非消費支出」の増加が隠れてしまう。「専門知識のない高齢者が大量のアンケートを「正確に」回答するのは、まず無理だろう。

 いずれにせよ、家計収支の赤字拡大の要因は、年金の手取り減少が大きな要因であり、消費支出額が増え続けているわけでないことがわかった。

● 昔も今もこれからも、 老後資金作りは必須! 

 何年か前に出版した30代向けのマネー本の中で、「いまの高齢者も年金だけでは暮らしていない!  昔もいまも、そしてこれからも老後資金作りは必要」と書いたら、30代の読者から「いまのお年寄りは年金だけで暮らしているわけでないのですね。びっくりしました」といった反響が多かった。

 就職氷河期に苦労して社会人になり、やっと入った会社でも給料は低く抑えられている「非バブル世代」の30代は、『年金制度は自分たちが老後を迎える頃には破綻しているかもしれないが(それも極端な考えだけれど)、自分の祖父母または両親にあたる今の高齢者は「有り余るほどの年金をもらっている」』と思っているようだ。

 ゆとりのありそうな生活ぶりを見て、そのように感じるのだろう。しかし、今の高齢者がゆとりのある生活ができるのは、有り余る年金収入があるからなのではなく、老後資金を貯めてきたからなのだ。

 このコラムのメイン読者である40~50代のみなさんは、将来の年金生活についてどう考えているだろうか。失礼ながら、「何とかなる」と思いがちのバブル世代は、年金だけで暮らせるのか、暮らせないのか、などといったことを深く考えたことがない人が多いと思う。

 そもそも日本の年金制度は、現役時代の収入を100%保障する制度設計ではない。2人分の年金収入がある共働き夫婦など例外はあるが、今も昔も原則として「年金だけでは暮らせない」のである。今の収入は、60歳を境に大きく下がることを肝に銘じておこう。

 これらのことを認識するのは早ければ早いほどいい。お金を貯める際に最大のモチベーションになるのは、“危機感”だ。老後資金作りに着手するには、「えっ、自分のもらえる年金ってこれだけ? 」といった具体的な危機感が必要なのかもしれない。

● 手取り月20万円の年金で 夫婦ふたりが暮らせるか? 

 定年まで40年近く会社員を続けてきた男性の場合、年金収入は基礎年金も含めて年180万~240万円が目安となる。会社員の年金額は、年金加入期間と平均給与をもとに決まるため、人によって金額は大きく異なるのだ。だから「自分の場合」を知ることが重要になる。

 「厚生年金が120万円、基礎年金が約80万円(実際には今年の金額は約78万円だが、ここではざっくりと80万円とする)、合計年200万円の年金収入」をモデルケースとしてみよう。これは会社員だった夫がもらえる分。

 専業主婦の妻の分は、「基礎年金+α(正社員で働いた期間があればそれに応じた厚生年金分)」なので年80万円+αとなる。この夫婦が二人とも年金をもらえるようになると、世帯の年金収入は、280万円+αということだ。

 年280万円、1ヵ月あたり約23万円。税金や社会保険料もかかるので、実際に使えるお金は20万円程度だろう。「えっ、これだけ? 」と驚きませんか? 

 夫婦のどちらかが亡くなると、年金収入はぐっと減る。夫に先立たれた妻の年金額は、夫の遺族厚生年金90万円+自分の基礎年金80万円で年170万円(月約14万円)。妻が先に亡くなった場合、妻の遺族年金はないので、夫は自分の年金の200万円(月17万円弱)だけの収入となる(細かい要件や制度説明は省略する)。

 男性は「先に死ぬのは自分」と考えるだろう(希望もこめて)。確かに夫が先に死亡するケースのほうが多いのは事実だが、妻に先立たれる可能性はゼロではない。

 リタイア直後に妻を病気で亡くしたという男性の相談を受けたことがあるが、「ひとり分の年金で暮らしていくのは大変。これまで食事作りも含めて家事を一切やってこなかったけれど、外食ばかりしているとお金が足りなくなるから、自炊をするようになりました。六十の手習いってやつですよ」とニコニコしながら、支出状況をまとめたシート見せてくれた。

 この方は、早い段階で収支状況を把握し“危機感”を持ったため、家事を覚えて家計のやりくりをする対策を取ることができた良い例だが、対策を取れずにあっという間に老後のための蓄えを使い切ってしまう人も少なくない。貯蓄が大きく減った頃に病気や介護で支出が増えると、本人も相当つらいし、子どもなど家族にも負担が発生することになる。

 繰り返し言うが、老後の生活は年金だけで何とかなると思ってはいけない。次回は、老後にもらえる年金の仕組みと自分の年金額の調べ方について解説しよう。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150826-00077328-diamond-soci
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